「自立支援介護」の導入プログラムと、介護経営コンサルティング
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業種
介護福祉施設
- 種別 ホワイトペーパー
2019年04月25日(木)、「介護経営の生き残りの鍵は「アウトカム(成果)」!自立支援介護が介護経営を健全化する」セミナーが開催された。第一部は、株式会社ポラリス代表取締役 森 剛士 氏がご登壇。第二部は、株式会社日本経営 副部長 坂 佑樹が登壇。森 剛士 氏と坂 佑樹に、「自立支援介護」の導入プログラムにおける問題意識について尋ねた。
森 剛士 氏 株式会社ポラリス 代表取締役、医療法人社団オーロラ会 理事長、一般社団法人 日本自立支援介護・パワーリハ学会 理事、一般社団法人 日本デイサービス協会 副会長、関西デイサービス協会会長、一般社団法人全国介護事業者連盟 理事/関西支部 副支部長
坂 佑樹 株式会社日本経営 副部長
自立支援介護の驚くべき効果は、ご存じですか?
「自立支援介護」の導入プログラムの要は、トップの意思決定。
セミナーでは「自立支援介護」の記録映像が流され、寝たきりだった方が歩けるようになるばかりか、介護の担い手になられるまで復帰。会場からはざわめきが起こりました。これを事業所に導入するには、どうすればいいのでしょうか。導入プログラムのようなものがあるのでしょうか。
森氏 私はもともと心臓外科医だったのですが、あることがきっかけで外科医を辞めて慢性期の病院に転職し、慢性期リハをフィールドワークにしてきました。
「自立支援介護」のパイオニアである竹内孝仁教授に出逢ったときは、衝撃的でした。「この理論が本当だったら、とんでもないことになる」と思いました。「水分・運動・食事・排泄」に適切に取り組めば、寝たきりの方が歩けるようになる。
やってみると、確かに次々と劇的に変わっていくのです。特に、要介護度3~5の方の改善率が高い。私どもはこの5年間で、約500人の方を「介護保険卒業者」として送り出していますが、卒業者というのは、「介護保険を全く使わない方」ということです。
この「自立支援介護」をもっと知ってほしい。世界に広げよう。ライフワークにしよう。私どものミッションを、そこに定めました。
フランチャイズで広げてきましたが、当社のビジネスモデルが画一的だったため、経営が成り立たない事業所が出てきました。フランチャイズにはフランチャイズ自体のビジネスモデルがあって、全ての事業所に当社が推し進める「自立支援介護」を100%理解、実践していただくことは難しいと気づきました。
そもそも「自立支援」は、すべてケースバイケースのスペシャルサービスです。パッケージ化できるものではありません。
自社であれば、トップダウンで取り組むことができます。しかし、他の方にそれを実践していただくには、別のスキルがいる。どのようなことも、餅は餅屋、いろいろなプロの方と組んだほうがいいのではないか。
プラットフォームとなるコンソーシアムを創ろうということで、いまではパナソニックさんやミサワホームさんなどともアライアンスを組んで進めています。コンサルティングでは日本経営さんと一緒になって、取り組んでいるところです。いくつかの市町村でも、本格的に導入が進められつつあります。
坂 介護事業の経営は、サービスだけでは成り立たないという現実があります。採用に苦しまれ、人の育成に苦しまれ、収支の管理に苦しまれ、私どもも、厳しい事業所の再生支援などもこれまで何度もお手伝いしてきました。
しかし、一時的に財務・経営がよくなったとしても、それで利用者の方々の暮らしは変わったのか、職員さんのやりがいは、改善されたのか。誰のため、何のため・・・。数年前から、もっと本質的にやらなくてはならないことがあるのではないか、と思うようになっていました。
そこで出逢ったのが森先生です。「これは凄い」と思いました。これまでの介護の常識とはまったく逆のことを、勇気を持って実践されて、実績を出されているのです。
介護の苦しさとは、やっていても効果がでない、目標がない、終わりがない、ということでしょう。目標を持って、やっていることに効果が実感できることは、職員の皆さんにとっても、やりがいと自信になる。なんとか、これを全国に広めたい。そう思いました。
しかし、「自立支援介護」は、サービスのやり方をちょっと変える、くらいの発想では、うまくいきません。「利用者を元気にする」。判断軸をそこに置くという意思決定、舵を切るということです。
これは言われてやるものではありません。同じような使命感や悩みをもったトップの方々がお互いに交流する中で、勇気や希望が与えられる。そんな場が必要です。
そして、そのような経営者を支える現場のリーダー。経営そのものを体系的に学び、KPIに基づいてきちんと現場を動かしていけるリーダーの育成が不可欠です。
その上ではじめて、「自立支援介護」というメソッドに取り組みたいという、その導入のお手伝いということができるのだと、考えています。
自立支援介護の驚くべき効果は、ご存じですか?
トップである私が、「覚悟を決めている」ということ
厚生労働省からご担当の方が視察に来られたり、現場では見学の方が後を絶たないとお聞きしています。見学者の方々から、いろいろなご質問がされると思うのですが、なぜポラリス様は、自立支援介護ができるのですか。他の施設と違う点があるとすれば、それは何だと思われますか?
森氏 新社屋ができてから、見学者の方がさらに増えているというのが実情です。職員の配置やオペレーション、離職率や水分の摂らせ方、ケアマネからの紹介実績など、あらゆるご質問をいただきます。
正直なところ、現場は1円単位で生産性を求められているので、なかなか手が回らず、十分な対応ができていないかもしれません。人を配置して、ご料金をいただいてでも、きちんとした対応をしたほうがいいのかもしれないと悩んでいるところです。
私どもが他の施設と違うところが一つあるとすれば、「私が覚悟を決めている」ということです。社員からも、「社長、ご指示が二転三転することはありますが、そこだけはズレませんね」と言われます。
経営は、そこだと思うのです。
坂 経験も価値観も生活環境も、バラバラの方々が集まって、一つの組織になって、そこに企業の文化とか風土とかいうものが、自然と出来上がっていく。この文化や風土を、どうすればもっといい方向に持っていけるか。このことに悩まれていない経営者はおられないと思います。
しかし、当たり前の言葉やどこかで聞いてきた言葉で語っても、組織を変えることはできません。メソッドだけから入っても、結局、組織は変わらないのです。メソッドではなく、組織の体質改善のほうが難しいのだと思います。
それは、まずトップの「覚悟」ということもあるのでしょう。
しかし、何かを成そうと思えば、悩みや迷いは常につきまといます。ポラリス様はじめ、先達が「こうやればできるんだよ」という実績を示してくださっていて、その学びの場に加わることができるということは、大変な勇気になるのではないでしょうか。
情報に対する現場の感度・感性に妥協しない
組織の体質改善が難しいということですが、これまでのご経験から、自立支援介護を導入する上で最も障害になることは何だと思われますか?
森氏 解決すべき課題は山積しています。離職もあれば、トラブルもあります。それを、障害とか壁とか感じるかどうか、ということだと思います。
私は生来、ポジティブなほうではなかったのですが、訓練してポジティブにしてきました。
できなかったことは、力不足だったのだと素直に認める。失敗から学ぶ。そして、次に繋げる。その積み重ねではないでしょうか。
ただ、気がついたら富士山の山頂にたどり着いていた、ということはありません。これは、組織のマネジメントにも当てはまりますし、介護の現場にも当てはまります。
現場であれば、「この人を元気にしてあげたい」と思うかどうか。
思っていたら、いろいろなことを知りたいはずです。いろいろなことを知って、練りに練って書いたプランは、一目で分かります。通り一遍で穴埋めしただけのプランとは、明らかに違うのです。
私は、穴埋めしたプランは認めません。そこに妥協はできないのです。
そして、「お節介をやく」ということ。
忙しい現場では、「だったら現場に入ってみてください」と反発もあるかもしれません。しかし、送迎の際のちょっとしたコミュニケーションでも、ピンとくる人はピンとくる。
坂 「情報に対する感度・感性」ということですね。介助が目的になっているのと、自立支援が目的になっているのとでは、何に反応するのか明らかに変わってきます。
現場にまで徹底して高い感度・感性を求められていることは、初めての方には大きなカルチャーショックがあるはずです。
覚悟があるからこそ、妥協しない。それが、組織の文化・風土を、確かに育んでいるのだと思います。
自立支援介護の可能性、ビジョンはどんどん広がっている
まずはトップの覚悟だという意味が、よく理解できました。最後に、自立支援介護の可能性や未来に対する夢やビジョンを、教えてください。
森氏 私がこの道に入ったきっかけは、祖母が心臓移植をしたものの植物状態になってしまい、行き場がなくなってしまったことがきっかけでした。外科医を辞めて慢性期病院の主治医になって、施設に無理を言って、すべて自分の責任で祖母を入院させてもらったのです。
日本は世界一の保険医療制度が敷かれていますが、急性期に全てのリソースを集中させようと思えば、介護予防や虚弱高齢者はリハビリの対象になりません。それが、逆に半分寝たきりの方をつくってしまっているという側面があるのだと思います。
セミナーでもご紹介しましたとおり、特に病気ではないが寝たきりの方は、自立支援介護によって劇的に改善するのです。
現場では、「元気になったらポラリスで働きたい」と言って、リハビリに取り組まれている利用者さんが、たくさんいます。重度のパーキンソンの方も、どんどん来られています。
PTやOTといった、急性期の自立支援のプロの方々との連携も進んでいます。
週に1,2回しか通われない利用者様に自立支援介護を提供する私どもに比べて、施設の場合は、24時間365日コントロール可能なわけですから、もっと成果が出るはずです。
また、コンソーシアムを組むことで、未来に対する夢やビジョンもどんどん広がっています。
AIによる自立支援介護の検証がスタートしていますし、複数の市区町村が「理想的な地域包括」に取り組んで競争する取り組みにも関わらせていただいています。
ベトナムでは、自立支援をベースにした介護保険制度の構築が進んでいます。
課題は山積していますが、出口のない悩みではなく、解決する手段もどんどん広がっているのです。
ぜひ、志ある多くの方々とご一緒に、「自立支援介護」の可能性を広げ、日本や世界の人々の豊かな人生に貢献したいきたいと思います。
本日は、まことにありがとうございます。